虫歯、事故、歯周病..など歯を失ってしまうリスクは誰にでもあります。
歯は他の身体の細胞のように再生しないので、何らかの形で補う必要があります。
現在失った歯を補う治療として、「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」がありますが、それぞれのメリットとデメリットをまとめてみました。
成人が歯を失う理由
予防歯科が浸透してきた現代では、虫歯で歯を失う人は大幅に減少してきています。
親がしっかりと口腔ケアをしている小さい子供の虫歯は限りなくゼロに近づいているそうで、親の管理から離れる中学生ごろからは虫歯の子供が急に増えてきてはいるものの、基本的な口腔ケアが身についている子供も多く虫歯で歯科医院を訪れる人はだいぶ少なくなってきているそうです。
日本人が歯を失う原因で一番多いのが歯周病で、他にもストレスによる歯軋りや虫歯治療等で弱くなった歯が根本から割れてしまい抜歯を余儀なくされるケースなどがあります。
歯肉も、歯根も、歯も一度欠損したり痛んでしまった場合、元通りに修復することは不可能なので、大切にしなければいけないことはわかっていても、症状をすぐに自覚しにくい口腔内や歯の問題は、気がついた(自覚症状が出た)時には取り返しのつかない状態になってしまうことがほとんどです。
失ってしまったものを後悔するよりも、失ったしまった原因と向き合い、最善の治療法を選択し、残ったを守るためのよい機会として今後に活かしたいですよね。
現在、歯を歯根から失った時の治療法としては「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」がありますが、それぞれのメリットとデメリットを実際に徹底的に比較してみました。
「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」の違いを比較
歯を失った時の治療法「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」の違いを比較し、メリットとデメリットを表にまとめました。
インプラント | ブリッジ | 入れ歯 | |
---|---|---|---|
長期安定性 | 半永久的(10年残存率90%以上) | 7-8年(10年残存率50~70%以上) | 4-5年 |
保険適用 | 不可 | 可能(素材限定) | 可能(素材限定) |
治療期間 | 6~24週間以上 | 2~4週間程度 | 2~4週間程度 |
適応範囲 | 外科手術必要(適応範囲限定) | 前後の歯が必要 | 特になし |
周囲の歯への影響 | 自立しているためほとんどなし | 周囲の歯を削る必要あり | 周囲の歯を支柱にする必要あり |
顎骨への影響 | ほとんどなし | 骨が減る | 骨が減る |
噛みやすさ(機能性) | 天然歯に近い(天然歯と比較して80%〜100%) | 天然歯に近い(天然歯と比較して60%〜90%) | 噛み合わせや噛む力が低下(天然歯と比較して20%程度) |
口腔内違和感 | 天然歯に近い | 天然歯に近い | 異物感あり |
歯磨きのしやすさ | 天然歯と同じ | 天然歯に近い | 取り外して清掃必要 |
審美性 | 天然歯に合わせて調整可 | 自由診療であれば調整可 | 自由診療でも限度あり |
「インプラント」のメリットとデメリット
「インプラント」は、抜けた歯があった部分にチタン性の人工歯根を顎の骨(歯槽骨)に埋め込み、その上に人工歯を固定する方法なので、天然歯に近い使い心地で違和感を感じることもあまりないことが最大の特徴です。
そのため、「天然歯と同レベルの機能性や審美性」があること、周囲の歯へ負担をかけず、噛み合わせも変わらず、天然歯と同じような負荷が顎の骨にかかり続けるため、「顎の骨や他の歯の健康状態が保てる」ことがメリットです。
更に、天然歯と全く同じように歯磨きやフロスなどの口腔ケアもできるため、虫歯や歯周病リスクを増やす要素がほとんどないこと、定期的にメンテナンスを行えば10年以上の残音律が90%以上と非常に持ちがよいことも大きなメリットです。
デメリットとしては、「人工歯根を顎の骨に埋め込む外科手術が必要であること(その他の身体的状況により対象者が限定される)」と「保険適用がないこと」です。
「インプラント」は、骨の厚み、高さ、神経や血管の位置など解剖学的な状態が十分にあることが手術適応の条件になるため、骨の高さや厚みが足りない場合は、インプラント治療はできません。
また、きちんとメンテナンスすれば半永久的に機能を維持できますが、あくまで異物を挿入しているため感染に弱く、メンテナンスを怠るとインプラント周囲炎という歯周病のような病気になることもあります。
ちなみに、「インプラント」と勘違いされやすい「差し歯」は、歯根が残った状態でかぶせものの歯を作る治療法です。「クラウン」や「かぶせもの」などとも呼ばれる審美治療のひとつですが、歯根がない場合の治療法である「インプラント」とは大きく異なります。
「ブリッジ」のメリットとデメリット
「ブリッジ」は、歯がない部分の両隣の歯を全周にわたって1~1.5mm程度削って人工歯を上から被せる方法で、前後の天然歯の被せ物と欠損部のダミー歯は3本一体であり、入れ歯のような取り外し式でないため、安定感があり、痛みや違和感も少ないことが特徴です。
つまり、「ブリッジ」はインプラントに近い機能性がありながら、インプラントのような手術(観血的処置)は不要で身体的な負担が少なく、保険を適用して審美性を諦めれば費用面も負担が少ないことがメリットになります。
ただし、「両隣の健康な歯を削る必要があること(一度削ってしまった歯は元に戻せず、表面を削ることで歯が弱くなるため虫歯リスクも破損リスクも増大する)」、歯のない部分の人工歯が顎の骨と密着しないため、「歯根のない部分の顎の骨が痩せてしまうこと」、保険適用で行う場合は特に「審美性に欠けること」がデメリットとして挙げられます。
更に、一度削ってしまった歯は元に戻せず、表面を削ることで歯が弱くなるため虫歯リスクも破損リスクも増大しますし、日々のメンテナンスにおいても天然歯と義歯の間に食べかすが詰まりやすく歯周病や虫歯のリスクが高くなることも大きなデメリットになり、5年程度でやり直しや他の治療方法へ変更しなければならないケースも多くあります。
また、両隣の歯がないとできない治療法なので一番奥の歯が抜けた場合には選べない治療法です。
「入れ歯」のメリットとデメリット
「入れ歯」は、金属の留め金を両隣の歯にかけ、人工歯を固定する治療法です。
保険適用できる一番一般的な治療法で、入れ歯装着までの期間も短く、費用負担も小さいことが最大のメリットです。
ただ、人工歯が固定されていないため、「咀嚼能力が大きく落ちて硬いものが噛みにくくなること」「歯根部の骨が減ってしまうため、長くても3年〜5年毎にで作り替える必要があること」「保険適用で使うバネや金属などは見た目もあまりよくないこと」「毎日の歯磨きの際には取り外して義歯用ブラシや義歯洗浄剤を使う必要があり手間がかかりますし、入れ歯のお手入れを怠ることで健康な歯の虫歯や歯周病リスクが増大すること」などがデメリットです。
また、審美性を意識した金属を使わない入れ歯もありますが、保険適用外のため値段は高くなりますし、メンテナンス等の手間やデメリットは同じです。
「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」どれを選べばいいの?
一般的に考えて、健康状態が良好で失った歯の本数が少なく、金銭的に余裕があり、治療期間が十分に取れるなら、その後のメンテナンスのしやすさや他の歯への影響も考えて「インプラント」を選ぶメリットが大きくと思いますが、個人差が大きい問題なので、まずは信頼できる歯科医に出会うことが重要かもしれません。